Tinkers

PAUL HARDING著、WINDMILL刊
Tinkers
昨年のピューリッツァー賞受賞作ということで何気なく購入。ネットの情報によると、「Cold Water Flat」というバンドのドラマーによる小説デビュー作らしい。
死の床にある時計修理屋のじいさんが、てんかん持ちの父親とのかかわりや、その父親が語る祖父のことなどの回想が淡々と語られる。その語り口は詩的であると同時にやや難解で、正直言って読み進めるのに難渋した。ただ、そのテンポに慣れると、とこどろこど意味が理解しきれないところは残るものの、物語が徐々に心にしみいってくる。また、印象的なシーンを読者の心に残す手管もなかなかのもので、精神を病んだ聖職者である祖父が(恐らく精神病院に)連れ去られた翌朝、まだ子どもだった父親の問いに、母親(祖母)が答える。

Howard, she said, Father is gone.

その芳醇な語り口とのコントラストが、読者に鮮明な印象を残す。