深夜特急ノート 旅する力

沢木耕太郎著、新潮社
旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)
独特の装丁。帯には「〈最終便〉が、発車します。」とある。かつて、熱中した思い出がある読者なら、誰しも手に取ることだろう。言わずとしれた「深夜特急」に結実した、沢木氏26歳の旅の裏話集。これまでに語られたようなことも多いが、過去の文章よりも当時の心情をより素直に吐露している印象を受けた。例えば、旅から帰国後について

 ところが、旅から帰ってきてみると、間違いなくひとつは話すことができていた。話して、少しは楽しんでもらえそうな素材をひとつは持てるようになった。そのことは人と対応するときの私をかなり自由にしてくれたと思う。

などと記している。
文章のタッチはさほど変わらないが、かつての「代表作」をここでまた振り返る作家のありように、若干の抵抗はあった。だが、改めて著者略歴を見て驚いた。あの沢木氏もすでに60代半ばなのである。