鹿男あをによし

万城目学著、幻冬舎文庫
鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
何かと話題の万城目学氏の小説第2作。奈良を舞台に、京都、大阪と、それぞれにまつわる動物(鹿、狐、鼠)が絡み繰り広げられる「救国」物語。主人公は、大学の研究所を体よく追い出された女子校の教師で、「坊ちゃん」のパロディーにもなっている。
卑弥呼伝説を絡めたロマンをかき立て、かつコミカルなストーリーは一気に読ませる。また、生徒の堀田の「魚顔」など、動物絡みの描写も多い。物語中盤のクライマックスとも言える剣道の描写では

堀田が獅子となって襲いかかれば、大将は虎となってそれに応えた。大将が鷹となれば、堀田は鷲となって迎え撃った。

といった具合である。
いずれにせよ、ストーリーテリングの才能には、かなり期待が持てる作家だと思った。