東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

リリー・フランキー著、新潮文庫
東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (新潮文庫)
本屋大賞」を取るなど、かつて話題になった「東京タワー」がついに文庫化、ということで、早速購入した。単行本の発売が2005年ということだから、すでに5年。話の内容は、フランキー氏の母親との半生を描いたもので、多少の誇張や脚色はあるにせよ、たぶんほぼ実話なのだろう。そういえば、表紙裏の著者プロフィールにも一応「著者初めての長篇」としか書かれておらず、「小説」とはなっていない。
当然、クライマックスはオカンが亡くなるところで、これは涙なしには読めないわけだが、筑豊に縁のある人間にとっては、最初のころの描写も「プチ青春の門」といった趣で興味深い。

炭坑から炭住の周囲を石炭を積んだトロッコが走る。町の中をガタゴト鳴らして、黒ダイヤをボロボロこぼしながらトロッコは次々とトンネルの闇へ消えてゆく。

ウィキペディアによると、著者が住んでいたのは鞍手郡宮田町だそうなので、いわゆる「ディープ」な筑豊とは言えないが、それでも雰囲気はよく出ていた。