草原からの使者 沙高楼綺譚
浅田次郎著、徳間書店
南青山にあるペントハウスで名をなし功を遂げた人たちが集い、語り合う「決して口にすることがなかった貴重な経験」。形式は連作短編集で「沙高楼綺譚」の続編にあたる。収められているのは4編。首相になれなかった政治家の秘書、一文無しになった富豪、サラブレッドのブリーダー、アメリカの退役軍人の話。正直言って、前作の方が各編の内容といい、醸し出す雰囲気といい、数段上だったのと印象を持った。本作は全体的に軽く、作品も冗長な気がした。
例えば「宰相の器」で、宰相になれなかった政治家にこんな言葉をはかせている。
俺の頭の中には、国家も国民もないんだ。保身と栄達とを、天下の利益だと偽って生きてきた。これ以上の大嘘があるか
政治家の贖罪の言葉としては分からなくもないが、むしろありきたりのような気もする。