失われた町

三崎亜記著、集英社文庫
失われた町 (集英社文庫)
三崎氏の3作目。町単位で人々が突然姿を消す「消滅」という現象をめぐる物語。主にそれをくい止めようとする人たちを描く。一応は我々と同じ世界が描かれていた「となり町戦争」よりも、設定は突飛。そのぶん取っつきにくく、最後まで読んでも「消滅」の種明かしもなければ、「町」との戦いが終わるところが描かれるわけでもない。その意味ではカタルシスには乏しいものの、オムニバスのように紡がれる一つ一つの挿話はなかなかいい。
中でも印象的だったのは、町に取り込まれることで別れることになる「夫婦」の感動的な話の後に続いて語られる、消滅対策の「管理局」でのセリフ。

ええ、検査時に「刷り込み」を行いました。それにより、対象個体を都川市の宿泊施設へと誘導することに成功いたしました。施設側の協力を得まして、すべての行動は撮影、録音されております。