カラマーゾフの兄弟3

ドストエフスキー著、亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫

亀山氏が巻末の「読書ガイド」で

 しかしいずれにしも、この第3部で、『カラマーゾフの兄弟』のもつスペクタクル的な面白さは、頂点を迎える。この第3部を交響曲になぞらえるなら、まさにスケルツォ−−。

と言っているのは決して大げさではない。いよいよ物語が佳境に入る。
ゾシマ長老と父フョードルの死。ゾシマ長老の遺体からは「謎」の腐臭が漂い、フョードル殺害容疑で長男ドミトリーが「逮捕」される。特にドミトリーの尋問をめぐる緊迫した描写はまさにサスペンス。フョードル殺害の場面は描かれず、推理小説の様相を呈するようになって、読み進めるのも楽になった。
また、ここにきて巻末の「読書ガイド」のありがたみが増している。長く難解な物語を振り返り「復習」するためだ。これを読む限り、殺人事件に関しては次男のイワンが最も怪しいという印象を持つのだが、果たしてどうなるか。