クライマーズ・ハイ
横山秀夫著、文春文庫
この著者の作品を読むのは「半落ち」に続き2作目。
日航機墜落事故の発生を受けた地方新聞の編集現場の人間模様を描く。
群馬の上毛新聞の記者だったという著者の経験が反映されているらしいです。
2作品に共通するのはラストの情緒ですが、
「半落ち」はミステリーだっただけに「謎解き」にこだわりすぎた感が否めなかった。
それだけ、終幕に向けて作者の「気負い」みたいなものが感じられて、
ちょっと読後の感動みたいなものが薄れたきらいがありました。
しかも「タネ」に某直木賞選考委員からケチがつきましたし。(著者も反論していますが)
だけど、こちらの作品はいわゆる人間ドラマっていうこともあってか、
さわやかなラストを自然に受け止めることができた。
また、題名が示す通り、登山が作中の重要なモチーフになっているんですけど、
登山を知らない人でもすんなり読めると思います。
「山好き」の本って得てして、山や登山の解説的な話がくどくど続いたりしますが、
この作品は適当な分量だと思います。
むしろ、くどいのは新聞社内の派閥抗争や「守りに入る人々」みたいな部分の描写。
齢を重ねるにつれて「守りに入る人々」っていうのはどの世界でもいるけど、
こんなにあからさまに派閥の旗幟鮮明に怒鳴り合うような会社ってあるんだろうか。
それとも新聞社ってそんなところなのかな…。