RANGE
David Epstein著、RIVERHEAD BOOKS
Kindleにて。ビル・ゲイツが2020年の読むべき本に挙げていたのをネット記事で見て、読んでみることにした。著者は(おそらく)スポーツライターで、早い段階での専門性(early specialization)よりも汎用性(分野の幅=RANGE)を持つことが重要だと説く。
幼少期からゴルフ一筋だったタイガー・ウッズと、さまざまなスポーツを経験したロジャー・フェデラーの比較を入り口に、さまざまな分野(特に科学)で狭い領域よりも広い領域での経験や、専門家の集まりよりもさまざまなバックグラウンドを持つ人たちの能力を寄せ集めた方がいい結果を生むことを紹介していく。例えば、ミケランジェロについては
Art historian William Wallace showed that Michelangelo was actually a test-and-learn all-star. He constantly changed his mind and altered his sculptual plans as he worked. He left three-fifths of his sculptures unfinished, each time moving on to something more promising.
といった具合だ。
これといった専門性なく、人生で浅く広くいろんなことに手を出してきた者にとっては勇気づけられる内容ではある。ただ、当然といえば当然だが、基本的に取り上げられているのは成功者ばかりである(ミケランジェロはともかくとして、フェデラーしかり、科学者もノーベル賞受賞者らである)。ウッズに至っては専門性で成功した例(近年の行状を見ると、それには代償も伴っているようだが)であり、結局のところ、「成功者は必ずしも専門家ばかりではない」ということを紹介しているに過ぎないとも言える。つまり、これも当たり前のことだが、RANGEそのものが成功を約束させているわけではないのである。
それでも、読む価値のある本だとは思う。例えば、転職した人(RANGEを広げに行った人)についての調査結果については、次のように記述されている。
Six months later, those who flipped heads and switched jobs were substantially happier than the stayers. According to Levitt, the study suggested that "admonitions such as 'winners never quit and quitters never win,' while well-meaning, may actually be extremely poor advice."
転職を考えている人にとっては、いい後押しになるのではないだろうか。