毎日新聞4月15日朝刊・書評欄

私は書評を読むのが趣味なんですが、新聞の書評というのはどうも好きになれなかった。「こんな本に誰が4000円も払うのか」というようなマニアックな書籍に、小難しい解説が付くのが常だからです。しかし、この日の毎日の書評欄は取り上げる本の選定からその評まで出色の出来だったため、ここに紹介したいと思います。

トップに取り上げられているのは「不都合な真実」(ランダムハウス講談社)。言わずとしてた元米副大統領、アル・ゴア氏の講演録です。このほどドキュメンタリー映画になって話題を呼びました。これは評者が養老猛司氏というのがいい。いくぶんありきたり感のある「アメリカ批判」ですが、この本の評にはそういう部分も必要でしょう。

ある人物についての伝記などを取り上げる「この人・この3冊」は黒澤明。黒澤の側近だった野上照代さんの「天気待ち」などが紹介されていて、一般の関心を呼んだのではないでしょうか。

さらに独自性が強いイタリア文化を紹介した「バール、コーヒー、イタリア人」(光文社新書)、「博士の愛した数式」で第1回本屋大賞を受賞した小川洋子さんの講演録「物語の役割」(ちくまプリマー新書)。このほど亡くなったロシア語通訳の米原万里さんの「発明マニア」(毎日新聞社)も興味深く、自社出版本を紹介しているのも嫌味に感じません。

極めつけは作家のお気に入りを紹介する「好きなもの」が村上春樹氏ということ。

いずれも読んでみたいと思わせるものばかり。一般紙なんて、その名の通りマニア向けではないのだから、こういう書評欄をこれからも続けてほしいと思います。