フェルメール全点踏破の旅

朽木ゆり子著、集英社新書ヴィジュアル版
フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版)
ジャーナリストが、フェルメールの作とされる作品37点全点の実物を鑑賞することを目指して世界中(といってもヨーロッパとアメリカだが)を旅するという趣向。実際には33点しか見ることはできないが、全点のカラー写真が掲載され、ファンにはありがたい。私のお気に入りの「真珠の耳飾りの少女」もハーグのマウリッツハイス美術館で鑑賞される。それぞれ作品の来歴にも触れられ「デルフト眺望」についてはプルーストが賞賛していたことを取り上げ

プルーストは命と黄色い壁を天秤にかけたあげく、小説の登場人物を殺してしまったのだから、これは手放しの礼賛以外の何ものでもない。

としている。
また、画中画や人物の周辺の小物の寓意の解説などはなかなか興味深かった。しかし、それだけフェルメール自身に謎が多いということなのだろうが、「真珠の耳飾りの少女」のモデル問題など消化不良の記述も多く、絵を年代順に取り上げていないために話が前後の作品に飛ぶことが多く、体系的に理解しづらいのが残念だった。