恋文の技術

森見登美彦著、ポプラ文庫
([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)
今度は書簡体小説である。京大(らしき)大学院生が、クラゲの研究のため、能登の試験場に半年飛ばされる。その間、「文通修行」と称して、友人や妹、先輩、家庭教師をしていたかつての教え子に至るまで、手紙を書きまくる。さすがに奇抜な設定で、結局は意中の「乙女」へのラブレターを書くことが目的だったという「純愛」も森見作品らしい。文中の表現も

不肖守田一郎、たしかに精神の貴族ではありますが、どうせ死ぬならばモリタ・ド・スケベーの称号は謹んで返上してから畳の上で死にたい。

などと、いかにもらしい。久しぶりに「ワールド」を思う存分楽しんだ。
また、森見氏自身が、主人公・守田の先輩という設定で登場するのもこの作品の特徴。自分をちゃかすという趣向なのだろうが、この点について若干、物語の世界に入り込むのを阻害する要因になっていたように感じた。