プリンセス・トヨトミ

万城目学著、文春文庫
プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
ここへの書き込みを1ヶ月していないということは、この1ヶ月で読み終わった本は、本書だけということになる。この間、何をしていたのか。日々のランニングが本格化して(4月は計170キロ走った)、通勤電車の中で寝てしまう時間が増えたのが最大の原因だろう。それにしても1月1冊というのは寂しい。
さて、本書は万城目氏の(文庫)最新作。大阪の男たちが、密かに「大阪国」というものを作って、豊臣家の末裔(王女)を守っている、というストーリー。京都を舞台とした「鴨川ホルモー」、奈良を舞台とした「鹿男あをによし」に続くことを考えると、三部作のようなものなのかもしれない。キャラ設定も立っていて、大阪国を危機に陥れる会計検査院の調査官は次の通り。

 新しいインクの香りに、鳥居の大腸は如実に反応を示す。(略)たとえば、古いファイルに紛れ込ませた、書き直したばかりの文書を探すとき、鳥居の腹の弱さは絶大な威力を発揮した。偽造された文書に染みこんだ新鮮なインクの香りは、鳥居の副交感神経をダイレクトに刺激した。便意は戦意となって、偽造発見への足がかりとなった。

ただ、過去作品よりも長い作品になっている割には、登場人物たちのつながりや、大阪国の背景説明などは消化不良。ストーリー展開もやや単調で、作品の質は過去作品の方が上のような気がした。