恋愛指南−アルス・アマトリア

オウィディウス著、沓掛良彦訳、岩波文庫
恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)
古代ローマの詩人による「恋愛指南書」。作者のオウィディウスは「愛の詩人」と呼ばれていたらしく、その愛の「技術」を伝授しようというもの。作者も巻末で「たわむれ」と書いているが、一種のパロディーだったらしい。
全3巻構成で、出会いから口説き落とすまでの第1巻と、手に入れた愛をつなぎ止める方策(?)を紹介した第2巻は男向け。第3巻には(大胆にも)女向けである。
やはり男として面白いのは第1巻。口説き落とすにあたっては、とにかく男を鼓舞することに腐心している。

 まずは、君のその心に確信を抱くことだ、あらゆる女はつかまえうるものだ、との。(中略)嫌がっているのだと君が信じているかもしれない女も、その実それを望んでいるのだ。

といった具合に。かつて「マグノリア」という映画でトム・クルーズが演じた「恋愛伝道師」のような役どころを思い出した。トム・クルーズらしいオーバーアクションだったが、その「男の鼓舞」にはマッチしていると思ったものだ。本書は、その後のヨーロッパの文学に多大な影響を与えたというから、あるいはあの役どころにも、多少はその影響があったのかもしれない。