世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)

村上春樹著、新潮文庫
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)
どこか中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーのような「世界の終り」と、巻き込まれ型のスパイ小説チックな「ハードボイルド・ワンダーランド」が交互に進行する80年代の作品。当初は全然関係ないと思われた二つの物語が、徐々にオーバーラップする(しかかる)展開は見事で、(下)を読むのが楽しみである。
ただ、(上)を読む限り、「世界の終り」の世界についていくのが若干、しんどい。それがいわゆる「村上ワールド」なのかもしれないが、一角獣の夢読みというのが理解しづらく、正直ついていけていない。
また、特に「ハードボイルド」の方は途中途中で主人公冗漫な思索が入る。たとえば主人公がスーパーで酒のポスターを見て

気をつけてみると、ウィスキーのポスター写真の殆どにはオン・ザ・ロックがうつっていた。水割りでは印象が薄いし、ストレートでは間がもたないのだろう。

と考えるくだりは「なるほどね」と思った。