文豪のミステリー小説

山前譲編、集英社文庫
文豪のミステリー小説 (集英社文庫 や 39-2)
仕事が忙しくなり、ここのところ、ほとんど読書の時間が取れなかった。時間が取れないというより、疲れのためになかなか本に集中できなかった。このブログの更新も3月中旬以来、2カ月ぶりとなる。
さて、本作は夏目漱石山本周五郎幸田露伴芥川龍之介ら「文豪」9人が著した「ミステリー」を集めたものである。編者は北海道出身の「推理小説研究家」。この肩書きだけで食べているのかよく分からないが、世の中には変わった職業があるものだ。
そんなわけで細切れの読書になり、内容がよく頭に入らなかった感じ。幸田の「あやしやな」あたりはほとんど意味が分からなかった。また、大佛次郎の「手首」など、ミステリーというより怪談・奇談的な話も多かった。そもそも小説というものは概して「謎解き」の要素を含む以上、ミステリーというくくりをすること自体がさほど意味がないような気がした。
その中で、剣豪小説で知られる柴田錬三郎の「イエスの裔」に感動。

 ともあれ、澄江が、日々に美しくなって行くのが、私には、ひとつの驚異でもあった。実際、私は、女の美しさというものが、知性ある見解とは全く独立した存在であることを、澄江によって教えられた。