運命の人 四

山崎豊子著、文春文庫
運命の人(四) (文春文庫)
裁判で破れ、実家の事業でも失敗した弓成は家族と離れて沖縄へ行く。その沖縄での悲惨な戦争の証言の取材と、米国立公文書館で密約を裏付ける文書が見つかったこと等も受けての弓成自身の蘇生が描かれる。大半が沖縄の人々の「聞き語り」で、過去の3巻とは相当趣を意にする。当然、戦後も基地を押しつけられている現状も描き、例えば反戦地主に次のように語らせる。

マングースはハブ駆除用に東南アジアから移入されたのだけど、繁殖力が強くて人間の生活を荒らし廻っている、米兵と同じだよ

沖縄の歴史や現状を訴える力は強い。ただ、「機密漏洩事件」の顛末としては、三木昭子のその後が雑誌の引用として「フリーカメラマンと同棲している」としか描かれないなど、多少、消化不良だった。