運命の人 三

山崎豊子著、文春文庫
運命の人(三) (文春文庫)
第3巻は裁判闘争を軸に描かれる。記者・弓成は1審で無罪判決を勝ち取るものの、2審で逆転有罪となり、最高裁で確定する。密約文書を持ち出した事務官・三木の方は1審で有罪判決を受け確定する。弓成の逆転有罪の決め手となったのが、弓成の「圧力」で仕方なく文書を持ち出した、という趣旨の三木の調書。弓成述懐では三木の方も「その気」だったことが描かれており、その豹変ぶりが強調される。
三木は手記を掲載することになる週刊誌記者との最後のやりとりも、バーで飲んでいる場面で、タクシーで自宅まで送るというような話の後

 夜更けた東京は、いよいよ煌めきを帯びてくるようだった。

と若干隠微な描写となっている。完全にヒール扱いとなっている三木だが、最終の第4巻で「救い」はあるのだろうか。