新選組物語

子母澤寛著、中公文庫
新選組物語―新選組三部作 (中公文庫)
子母澤の「新選組三部作」の最後を飾る。題名に「物語」とあるように、資料や聞書が主だった過去2作と比べ、いわゆる「小説」の体裁をとっている文章ばかりで、格段に読み易い。浅田次郎著「壬生義士伝」の主人公、吉村貫一郎の話もこの3作目でやっと登場する。「隊士絶命記」という連作の一つで、短いながらも予想以上に話の筋は既に子母澤が記していたことがわかる。南部藩に残した家族に仕送りしていた話も紹介されているし、その最期となる藩邸での凄惨な切腹に加え

 床の間に、小刀と紙入に二分金が十ばかり入ったものが、ちゃんと置いてあって、傍らの壁に、大きな字で、
「此弐品拙者家へ…」
と書いてあったという。

との記述もあった。
ある意味、天才的なストーリーメーカーだと思っていた浅田氏が多少、近しく感じられた。