THE WATER-METHOD MAN

John Irving著、Ballantine books
The Water-Method Man
1972年刊行とあるから、アーヴィングの比較的初期の作品だと思われる。尿道狭窄のおうな症状を持つ男が、人生を試行錯誤する、おなじみの成長譚。おそらくこの尿道狭窄と、その治癒が、男の人生の袋小路からの脱却(少なくとも精神的には)の象徴となっているのだろう。
時制が過去(最初の妻と出会うころ)と現在(離婚後の話)が行ったり来たりするうえ、男が博士課程で研究しているドイツの中世方言の叙事詩のストーリーも挟まれ、最初は話の筋を追うのはなかなか骨が折れた。だが、「アーヴィング節」は随所に見られ、特に男の別れた妻との間にできた息子と、なぜか家族に交わることになったリムジン運転手との次のようなやりとりは、やはり秀逸。

He(運転手) let Colm(息子) try on his fancy driver's cap; the kid grinned and marched a few steps up the dock. Funny, Dante thought. Kids love uniforms, and most men hate them.

で、その様子を父親である主人公が遠くから見ているという場面で、胸を打つ。