美女と竹林

森見登美彦著、光文社文庫
美女と竹林 (光文社文庫)
森見氏自身が登場し、「竹林経営」なる未来を妄想しながら、会社の同僚が所有する竹林を刈る(ことを妄想する)というだけのエッセー風小説とでも言おうか。「小説宝石」の連載だったようだが、文中でも再三言われているように、行き当たりばったり感前回である。美女は、結局文庫版の「番外編」にしか登場せず(これ自体もかなり強引な形である)、ずっと竹の話ばかり。しかも、竹林の手入れがいかに大変かという話ばかり。MBC(モリミ・バンブー・カンパニー)なる竹林企業のCEOになっている未来を夢想する場面では、本人の講演で

「ありがとう、みなさん。それからーー」
登美彦氏は手を挙げた。「もう一つ、ささやかなお知らせがあります」

と、スティーブ・ジョブスばりに語らせるなど、いつもの「遊び」は健在。しかし、やはり全体としてまとめて読むには無理がある。