夕映え天使

浅田次郎著、新潮文庫
夕映え天使 (新潮文庫)
浅田氏の最新短編集。人生のほんの1ページをともに過ごした女の死をきっかけに、中年のおやじ2人が邂逅する、典型的な浅田作品といえる表題作など6編。定年の日を迎えたおやじの悲哀を描いていると思いきやSF的な種明かしが待つ「特別な一日」や名作短編「薔薇盗人」の世界の続編のような「丘の上の白い家」などテーマは多彩。ただ、全体的には成熟期(老いぼれ)の人生のけじめの付け方みないなものが「縦軸」になっているような気がした。
そんな中で、「丘の上の…」の最後に明かされる白い家に住む少女の「遺書」は、女の怖さがよく出ていた。男と心中に向かう途上の列車内で、別の男(物語の主人公・小沢)に宛てたという設定。

 つまり、いま私の前でナイロンヤッケを着て寝ているのは、本当なら小沢君だったはずなんです。今さらこんなことを言うのは変ですけど、どちらかというと私は、亮二より小沢君のほうが好きでした。