ちくま文学の森1 美しい恋の物語

筑摩書房
美しい恋の物語 ちくま文学の森 1巻(全10巻)
森毅井上ひさしらが編者となって、特定のテーマの国内外の作品を集めて刊行する「ちくま文学の森」シリーズの第1巻。島崎藤村の有名な詩「初恋」にはじまり、堀辰雄アンデルセン、ヘッセ、伊藤左千夫菊池寛スタンダールバルザック錚々たる作家の作品が集められている。中には「美しいか?」と首をかしげたくなる作品もあったが、最も印象に残ったのは、巻末の加藤道夫の戯曲「なよたけ」。
竹取物語」が生まれた経緯についての作品。作中、かぐや姫のモデルとなる「なよたけ」との恋に破れた息子を励まそうと、東国に流されていた父親が次のように語る。

こうして、遙かな東国へ来てみると、あんなごみごみした、愚劣な人間達の寄り集まっている狭っくるしい都の中で、なんでまあ、あのように浅間しく名声なぞと云うものにこせこせ執着していたのだろうと思うなあ。まるで、夢のような気がするよ。やれ、位が一つ上ったと云っては鬼の首をとったように大騒ぎをして喜んでみたり、やれ、大伴の大納言は一生の敵だなんぞとむきになって憎んだりしていたあの頃の自分がまるで嘘のように馬鹿馬鹿しく思われて来るのだよ。本当に儂はもう一生あんな馬鹿げた所へは帰りたくなくなった。

さて、楽しめた割には読了が遅くなったのは、昨年11月から始めたジョギングの疲れのせいなのか?