亡国のイージス(下)

福井晴敏著、講談社文庫
亡国のイージス 下(講談社文庫)
イージス艦の反乱がめまぐるしく描かれる。前置きが長かった分、その後の展開はスピーディー。私は普段の読書の際、印象に残った描写があるページを折ることにしているが、それをほとんど忘れるくらいだった。全559ページの下巻では、わずかに2カ所が折られているだけで、どこが印象に残ったのかも判然としないくらいだ。あえて言えば、この小説における「会議室」の主役であるDAISの渥美の心中描写。

 妻に捨てられ、不器用な理想家肌を野田局長からも見限られて、嫌悪してきた実家と同じ、大局を見ずに既得権益にすがる者たちが集う会議室で孤立している自分。己の示し方が下手な男はこうなるという見本だな、おれは。

とにかく、登場人物の「ブラザー・フッド」が熱く、泣かされた。
それと、余談だが、福井氏はハリウッド映画のような小説を書くことを身上にしているようだが、なるほど、登場人物の家庭崩壊が多い。