1984

GEORGE ORWELL著、PENGUIN BOOKS刊
*1984                     PGRN4 (Penguin Readers: Level 4)
全体主義社会の恐怖を描いたジョージ・オーウェルの名作。アマゾンの商品紹介で見ると、いろんなバージョンがあるらしく、画像と実際に読んだペーパーバックは違うものになってしまった。
村上春樹氏の「1Q84」を読む前(文庫化されるまでには、しばらく間があるだろうし)に、予備知識として読んでおこうと思った。言葉遣いが意外と難解で、予想以上に読み進めるのに苦労した。
おそらくは実在しない象徴的存在の「Big Brother」を頂点とする「Party」が支配する監視社会。そこでレジスタンス(というよりも革命か)を企図(というか思い描く)する男の物語。成就するどころか、「Party」の術中にはまり、そこに救いやカタルシスはない。特に後半に延々と続く拷問のシーンは恐怖だが、それ以上に背筋が寒くなったのは、巻末の付録として収録されている論文「THE PRINCIPLES OF NEWSPEAK」だった。「Party」の「公用語」である「Newspeak(ふつうの英語はOldspeak)」について解説。その目的を

The purpose of Newspeak was not only to provide a medium of expression for the wold-view and mental habits proper to the devotees of Ingsoc, but to make all other modes of thougt impossible.

としている(Ingsocは物語で信奉される思想で、別名「English Socialism」)。そのために英語の語彙を減らし、言葉が持つ意味も基本的に一つだけにしていることが説明される。それによって、いわゆる「異端的な思想」を言語上不可能にするということなのである。為政者やメディア、日常生活における日本語の現状に思いをはせると、これが必ずしもファンタジーとは言えない気がして、怖くなるのである。