大作家“ろくでなし”列伝

福田和也著、ワニブックス
大作家“ろくでなし”列伝~名作99篇で読む大人の痛みと歓び~ (ワニブックスPLUS新書)
和洋の作家24人の作品と、その破天荒な生き様を紹介する。作家は三島由紀夫川端康成ヘミングウェイら主立った「大作家」を網羅している。エピソードも比較的一般に知られていることが多く、新たな発見というものは少なかった。また、著者特有の断定調の文体が好みが分かれるところだろう。
その中で、印象に残ったのは、金子光晴がパリについて語る一節。

ローマでも、マドリッドでも観光地に変わりないが、たいてい人は、そこを通り過ぎていく。パリでは、それだけのことですまなくなり、分際を忘れたものが芸術家になろうなどという野心を起し、滞在の期限がきれたのも忘れてかえりの旅費もなくなったはてが、乞食になるのだ。

私も大学時代に、比較的長い旅の最終目的地をパリとした。「芸術家になろう」というような気こそ起きなかったものの、何となく離れがたい、街の魔力のようなものは感じた。