若い読者のための短編小説案内

村上春樹著、文春文庫
若い読者のための短編小説案内 (文春文庫)
村上春樹氏が、お気に入りの「第三の新人」世代の作家6人の短編6編を読み解く。アメリカの大学で自身が教えていた内容がベースになっているようだが、作品選定のひねり方と、その理由を長々と説明しているあたりは、いかにも村上氏らしい。
私の既読作は一つもなかったが、印象に残ったのは安岡章太郎の「ガラスの靴」のくだり。

それからこれはそんなにたいしたことじゃないかもしれないけれど、僕もこの人と同じ一人っ子で、そのせいか、この人の対象との距離の取り方が、なにか自然に理解できるところがある。誰かが「一人っ子は一人っ子であるだけで、既にひとつの病である」というようなことを言っていたけれど、それはそうかもしれないなと思わされるところがあります。

私も同じ一人っ子として「なるほど」と思い、安岡氏の作品を読んでみようかな、と思わされた。
作品の「読み込み」を大事にする村上氏らしく、濃厚な読書案内。欲を言えば、村上氏自身の創作作法みたいなものをもう少し読みたかった。