天人五衰

三島由紀夫著、新潮文庫
豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)
豊饒の海」4部作の完結編。老いた狂言回し(主人公?)本多が、松枝清顕からの転生の証拠である「三つの黒子」を持つ少年、透を養子にとる。それがとんだ「見当はずれ」になっていく。すべてを見通す人物としての本多が、天人が死の間際に見せるとされる五つの衰えの兆候「五衰」のままに、無惨な末期をたどる。だが、最後に会う清顕のかつての恋人、聡子の謎めいた言葉は、輪廻転生に翻弄され続けた本多の生に対する「救い」だったのではないかと思いたい。
ただ、これまでの3作と比べて、駆け足で書き進められたような印象を持つのは、この遺作が書かれて間もなく起こった「三島事件」の顛末を知っているからだろうか?