赤と黒 上・下

スタンダール著、野崎歓訳、光文社古典新訳文庫
赤と黒 (上) (光文社古典新訳文庫 Aス 1-1)
スタンダールの代表作のフランス文学者による新訳。こちらも旧訳は未読なので、比べることはできないが、あまり読みやすい文体とは言えなかった。ただ、「訳者あとがき」によれば、著者自身も読み返して

「あまりにもつぶ切れの、あまりにごつごつした文体」「無愛想で、ごつごつして、ぎくしゃくした、生硬な文体」「ぶつ切れの文体、修正すべし」

と評していたようなので、読みにくさはその原文によるのかもしれない。
また、一般的には「貧しい若者が野心を持って出世しながら、敗れる話」と言われているが、若干、イメージ通りとは言えなかった。特にジュリアンの「目的」が不明瞭だし、ラストで死刑判決を受けることになる事件を起こした「動機」も判然としない。「目的」の不明確さは読み進めるのをつらくさせ、「動機」のそれはラストの感動を減じていると思う。
正直言って、しんどい小説であった。