いま、会いにゆきます

市川拓司著、小学館
いま、会いにゆきます
昨日の「キムラ弁護士、ミステリーにケンカを売る」で紹介されていた本書、さっそく読んでみた。妻の本棚に入っていた単行本。374ページあるが、短い言葉による会話が多く、約2時間で読了した。
帯に書いてある阪急ブックファースト梅田店店長の言葉によれば

とにかく、この小説を早く読んでください。一刻も早く。早ければ早いほどより多く人生は豊かになります。感涙度100%

とのこと。確かに「感涙度100%」であった。
当初の文体は「世界の中心で、愛をさけぶ」を彷彿とさせる。安易な比喩が目立ち、なじめなかった。話の奥行きもない。終盤に近づくにつれて「感涙度」が急速に上がっていくが、これもある意味では、父子のもとに死んだはずの母が帰ってくる話なのだから、当然と言えば当然である。
しかし、キムラ弁護士も言っている通り、やはり最後に明かされる「仕掛け」が鮮やか。キムラ弁護士が書いていた、矛盾を生じたかもしれない女性の容貌に関する不自然さがどこなのかはよく分からなかったが「なるほど」と思わせるに十分なのは確か。著者はインターネット小説から作家になったようだ。なかなか素晴らしい。
どうでもいいことだが、この作品を読んで、入院患者のコンタクトレンズに注意が行くキムラ弁護士もさすがである。