空中ブランコ

奥田英朗著、文春文庫
空中ブランコ (文春文庫)
奥田氏の直木賞受賞作。「イン・ザ・プール」に続く型破りな神経科医師、伊良部一郎モノの第二作だが、全体的なまとまりは本作の方がいいような気がした。サーカス団員、ヤクザ、作家、プロ野球選手など「病」を抱えた主人公も多彩。特に義父である大学病院の学部長の「ヅラ」をはぎ取りたい衝動に駆られる医師の話「義父のヅラ」は笑えた。テーマが精神医学だけに、こういう作品を楽しめるかどうかは、読者の心理状態も影響するのかもしれない。そういう意味では、前作よりも今作の方が楽しめた私は、今の方が「病」とまではいかないまでも、何らかの形で「悩み」は深いのだろう。前作のブログエントリー日の当時の生活を思わず思い返してみた。確かにそうかも…。
ただ、伊良部モノはもう一作「町長選挙」というものもあるようだが、ややワンパターン化の恐れがなくもない。あるいは本作最後におさめられているワンパターンな恋愛小説ばかり書いていることに悩む作家の話「女流作家」は、自己パロディーなのだろうか。