モナ・リザの罠

西岡文彦著、講談社現代新書
モナ・リザの罠 (講談社現代新書)

帯に「ダ・ヴィンチの『仕掛け』を知的に読み解く」とあるように、様々言われている名画「モナ・リザ」の解説本。題名に「罠」とあるのは、この絵が持つ独特の雰囲気や評論などから、グロテスクなイメージを持ちやすいことを指していると思われるが、それに限らず、モデル問題やアシンメトリーな背景、絵の両端切断説など、モナ・リザにまつわる「謎」について丁寧に解説している。

著者は「おわりに」で

 本書は、そうしたイマジネーションを発揮して、見慣れた『モナ・リザ』の真の魅力を見出すための本として書かれています。もはや、あって当然と思われるものの筆頭として、少なからず揶揄され、無視され、時には嫌悪さえされているこの絵が、私たちの前にあることへの感謝を新たにするために書かれています。

と書いている。いささか大げさではあるが、「モナ・リザ」の見方が変わることは確かで、何となく知的な読み物だった。こと「モナ・リザ」に関しては同様の本は多数あるのだろうが、別の絵画作品の解説についても作者に期待したい。

また最近、ダ・ヴィンチが再注目されるきっかけとなったベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」で、フランス人のルーブル美術館館長が残した暗号で、「モナ」がフランス語の「Monnna」ではなく英語の「Mona」と綴られていたことの不自然さを指摘している部分もあって、面白い。