清宮克幸・春口廣対論 指導力

松瀬学著、光文社新書
清宮克幸・春口廣対論 指導力 (光文社新書)

昨年まで早稲田大ラグビー部監督を務めた清宮克幸氏と、9年連続で大学選手権決勝に進出している関東学院ラグビー部監督の春口廣氏の対談。大学ラグビー界(清宮氏はトップリーグサントリーの監督になっているが)の指導者としてはトップツーの話だけに、興味深く読めた。
エリートサラリーマンで「勝負師」である清宮氏と、大学教授の「先生」である春口氏の違いも出ている。例えば、同じ力量の4年生と1年生のどちらを試合で起用するか、という問いに対して、清宮氏は「1年生」と即答し、春口氏は迷ったすえに「4年生」と答えている。
また、春口氏の言葉からは、新興勢力・カントーとしての思いも強く出ていた。例えば、

うちのラグビーの原点は、いいラグビーをすることなんだ。いいラグビー、強いラグビーをしないとワセダは試合をしてくれないよ。慶応も明治も試合をしてくれないよ。

一方で、清宮氏は

トップリーグの監督を受けることを決めたのは、その先に日本代表の監督があるからです。日本ラグビーを変えるためには、ぼくが日本代表の監督にならないとダメだと思ったからで、代表監督になれば、いろいろなことに手を出します。

と言い切る。不遜と感じる向きもあるだろうが、「有言実行」男の面目躍如といったところである。


ラグビー人気の凋落が言われて久しいが、ラグビー界に久しぶりに登場した指導者としてのスター2人によるこういう本がもっと読まれれば復活の助けになるのではないかと思う。そういう意味では、「指導力」という地味な書名と、冒頭で大学選手権決勝の模様を少々マニアックに振り返る場面が続く点が気になる。いずれにしても人気の復活はそう簡単ではなく、一朝一夕には無理だろう。そういう意味では、両大学とも地域密着のスポーツクラブを立ち上げて息の長い普及活動を行おうとしているのは正しい方向性で、応援したいと思う。