ウェブ人間論

梅田望夫平野啓一郎著、新潮新書
ウェブ人間論 (新潮新書)

シリコンバレー在住のコンサルタント、梅田氏と芥川作家、平野氏の対談。
梅田氏は新書「ウェブ進化論」でヒットを飛ばしたWeb2.0の主唱者で、
平野氏も自らブログを開設するなどインターネットに造詣が深い。

全体的には両者ともウェブの進化と、それに伴う人間の進化を肯定的にとらえているのが特徴です。Googleに勤める人たちが映画「スターウォーズ」好きだというエピソードが出てきますけど、私にはウェブの発展に伴う人間の進化というのはガンダムの「ニュータイプ」を思い起こさせました。ニュータイプは、宇宙での生活が長くなると超能力みたいなものが身に付く人が出てくるというのもので、ガンダムの物語を深いものにしているキーファクターの一つです。この「ウェブ人間論」からもそういった「人間の新たな段階」への憧憬みたいなものを感じました。

ただ、梅田氏の発言で気になることが一つ。

ところがグーグルというのは、戻ってきた個人情報を使うという発想が薄いんです。そういう心配をもっと上の世代の人たちはするんだけれど、若い彼らは、戻ってきた個人情報にあんまり興味がない。

メールの内容に即した広告を自動的に入れたりするのは、プログラムで自動的にやっているのであって、グーグルで働く人たちには悪意はない、という話です。これはどうなんでしょうか。「悪意」がないからと言って「安全」とは限りません。一握りの悪意が全体の善意を操作するのは歴史が示してきた通りです。その意味では、「もっと上の世代の人たちの心配」っていうのはしてもしすぎることはないと思います。

平野氏の小説は、芥川賞に興味がなかったことと、難解だという評判が災いしてこれまで縁がありませんでした。今度、一冊読んでみようかな。