憲法九条を世界遺産に

太田光中沢新一著、集英社
憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さんと多摩美大の中沢新一さんの対談。
テレビ番組などで太田さんが主張しているいわゆる「護憲」を主張する本です。
おなじみの太田さんの「毒舌ジョーク」を求めると期待はずれに終わりますが、超一級品と言える太田さんの「笑いのセンス」の下地になっているものが垣間見えます。
オススメの本なので、詳しくは実際に読んで頂きたいですが、桜と小泉純一郎前首相の描写などは秀逸です。
いわゆる文化人の政治的な主張といえば、U2のボノが九州・沖縄サミットの時に「ジュビリー2000」というキリスト教の大聖年に合わせて最貧国の債務を免除しようという運動をしていたことが思い出されます。
ある種、キリスト教徒のエゴとも言えるその主張をまとめたボノの論文を鬼の首を取ったように掲載する当時の朝日新聞に不快感を覚えたものですが、何よりU2ほどの高い芸術性を持ちながら、歌や曲ではなく論で主張していたことが残念でした。(アルバム「How to Dismantle an Atomic Bomb」に感動して、私のこの違和感は吹き飛びましたが…)
太田さんの素晴らしさは、この点について苦悩というか、コントなどの芸に昇華させることなく、ストレートに主張している(せざるをえない)ことについての疑問を正直に吐露しているところだと思います。そういう意味では、前半の「主張」の部分よりも、後半に出てくる「自分語り」の部分の方が読み応えがあると言えます。SMAPの歌に感動したりと、いささか幼稚とも思える部分もあるのですが、むしろそれだからこそ、太田さんの内面を知ることができるのだと思いました。「主張」をいかに「芸」に昇華させるかというのは、芸術家の永遠のテーマなのでしょうけど。