夜のピクニック

恩田陸著、新潮社
夜のピクニック (新潮文庫)
高校の行事である夜間歩行祭を参加した生徒たちの人間模様。
主人公の一人、貴子の「賭け」なるものもそんなに大げさなものではなく、大きな事件も起こるわけではない淡々とした作品です。
それでも最後まで一気に読めたのは、そのノスタルジックな雰囲気のせいでしょう。
誰もが何らかの形で抱えている青春の記憶にほどよく訴えかけてくるものがありました。
夜間歩行祭を物語の舞台としたことで、成功は約束されたものだと言えます。
ぼくが通っていた高校でも50㌔ぐらい走る(歩く)行事がありました。
それこそこれといったドラマもなく、もはや誰と歩いたのかさえ思い出せませんが、それなりに懐かしく思い出しました。

第2回本屋大賞の受賞作ですが、この控えめなノスタルジーは第1回の受賞作「博士の愛した数式」と似ていると感じました。
第3回の「東京タワー」は、まだ文庫になっていないために未読ですが、書評なども見る限りおそらく同様と思われます。
いずれも本屋さんの評価だけでなく、かなり売れているとか。これが時代の雰囲気なんでしょうか。
心地よい感じはありますが、やや物足りなさも感じてしまいます。