世界史は化学でできている
購入して読了。来年大学受験を迎える息子が化学部志望なので、興味を持つかと思った。著者は理科教育などを専門とする東大の研究者。「火」や「食物」、「酒」、「セラミックス」など物質を軸に、その発展の歴史やそのターニングポイントとなった発見をした学者などについて概説している。
例えば、プラトンが行った酒宴「シュンポジオン」がシンポジウムの語源になったことや、イギリスの高級陶器として知られるウェッジウッドについては
ウェッジウッドは、一七三〇年にイギリスのスタッフォードの陶工の家に生まれると、九歳で実家の陶器工場ではたらき始めた。探求心に富んだウェッジウッド少年は、さまざまな試行錯誤を経て、伝統的な方法ではなく、科学的な陶器づくりにチャレンジする。
と、意外と泥臭い歴史が語られる。また、ダイナマイトが兵器に使われた「負い目」からノーベル賞の創設を遺言したとされるアルフレッド・ノーベルについては、
一瞬のうちにお互いが絶滅するような兵器をつくることができれば、恐怖のあまり戦争を起こそうという考えはなくなる――。
との「核抑止論」的な考えを持っていたことも明かされている。
理科教育が専門だけに語り口は平易。だが、最初の元素についての話など、まさに「教育本」してもしっかりしていて、それだけに簡単に読み進められる本では意外となかった。