日本の構造

橘木俊詔著、講談社現代新書

日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (講談社現代新書)

 図書館で借りる。副題に「50の統計データで読む国のかたち」とあるように、経済学者がさまざまなデータと紹介してこの国の「現在地」を探る。今年3月の発行で、データことないものの、新型コロナウイルスの影響なども論じられている。

 国際的に見た経済大国からの凋落や、「一億総中流社会」から「格差社会」への変化、東京への一極集中の進展など、既によく言われていることが裏付けられている。そういう意味ではあまり驚きはない。ただし、データによっては、よく言われていることなのかもしれないが、これまで知らずに、あるいはあまり意識して来ずに驚かされたこともあった。例えば、国立大学授業料の伸び率について

 筆者が学んだ1970年頃の国立大学の授業料は年額1万2000円であったが、今は53万5800年なので、じつに45倍近い高騰である。おそらく他のどの財の価格よりも高い上昇率と思われる。

 と記されている。私立大学の授業料の平均は年91万1716円で、2倍程度の増加となっているものの、国立・私立の授業料の差が相当縮まっていることが示された。理由の一つとして「日本では教育は家庭の責任のもとでなされるべし、との社会的信念がある」とされていた。

 少子高齢化がこの国の悩みの種になって久しい。少子化をめぐっては保育園などの問題がクローズアップされがちだが、結局のところ、この国は子供や若者らを通じて「将来設計」ができていないのではないか、と思わせるデータであった。