中原の虹1

浅田次郎著、講談社文庫
中原の虹 (1) (講談社文庫)
いよいよ「蒼穹の昴」第3部、「中原の虹」に手を付けた。「蒼穹」の主人公、春雲の兄・春雷がこちらでは主役。満州馬賊(日本風に言えばヤクザのようなもののようだ)の頭領たる張サクリンの手下となって活躍する。「蒼穹」とのストーリーのオーバーラップも楽しみの一つで、第1巻にも春雷が捨てた故郷を思い出す場面で、梁文秀が出てくる。村を捨てて悪党になるかもしれないという春雷と、いかにも浅田作品らしい、次のようなやりとりをする。

「飢え死ぬよりもましさ」
孔子様の弟子が、そんなこと言っていいんか」
「ほかに言いようがない。死体は人間じゃないが、悪党は人間だ。生まれたからには、人間として生きなければ嘘だろう。今のこの国には、孔子様の訓えよりもっと大切なものがあるんだ」