町長選挙

奥田英朗著、文春文庫
町長選挙 (文春文庫)
デブで強烈なキャラクターの医師、伊良部一郎を巡る人情ギャグシリーズの3作目。収録作は4作で、ナベツネをモデルに、プロ野球の1リーグ化などの問題で神経をやられる男を描いた「オーナー」や、ホリエモンをモデルに、カネにものを言わせてプロ野球球団の買収を図る男が主人公の「アンポンマン」が対になっている。過去2作が何本収録していたかは覚えていないが、今回は1本1本が若干、長すぎるような気がした。特に離島に出向中に島を二分する町長選挙に巻き込まれた都庁職員を描いた表題作は、冗漫な印象を持った。
ただ、ほろっとさせる話の展開は見事。「オーナー」では、伊良部の勧めで主人公・田辺が開いた生前葬に、「泉田首相」も参列してあいさつする。

田辺さん、あなたはわたしが嫌いでした。自分を嫌う人間を好きになる道理はなく、わたしも、同じようにあなたが嫌いでした(中略)それなのに、田辺満雄という人物を失ったこの淋しさはなんなのでしょう。