フォレスト・ガンプ 一期一会

フォレスト・ガンプ [DVD]
アカデミー賞の作品賞を含む6部門受賞のヒット作。公開された90年代には「感動作」と評判になったが、なぜか観ないままになっていた。
母子家庭に知恵遅れで生まれたフォレストが、類まれな身体能力と、「運命」という名の偶然に導かれて歩むサクセスストーリー。デフォルメされたキャラクターや出来事が次々と登場するさまは、ジョン・アーヴィングを思わせないこともない。それなりに涙を誘ううえ、50年代から80年頃までのアメリカ史を通観することにもなり、なかなか興味深い。その意味ではアカデミーで好評だったのもうなずける。アメリカ人たちの郷愁に訴え、緩い涙腺を刺激したのだろう。
しかし、ストーリーには粗さも目立ち、大半をフォレストの回想という形にしているために仕方がない部分もあるが、特にジェニーの人物像の描き方が不十分だった。また、回想終了後の部分が長すぎて最も盛り上がるはずの終盤がだれた。回想終了+αで終わらせるべきだったのではないだろうか。また、実際にあった出来事を下敷きにしているのかもしれないが、ひたすら走って大陸を横断し続ける挿話は何を意味するのか理解不能だった。
最大の問題は、フォレストの「成功」が観客に何を感じさせるかだ。「知恵遅れの子」でも頑張れば成功できるというメッセージは、当然、障害者を「下」に見る視点をはらんでいる。劇中には作者が笑いを誘おうとする意図が明らかなシーンがいくつもあるが、素直に笑う気にさせない。ハンディキャッパーを主人公にした物語の宿命なのかもしれないが、この映画で語られる大げさなサクセスが、その問題点を拡大する結果になったとしか思えない。