クワイエットルームにようこそ
松尾スズキ著、文春文庫
肩書きが何なのかよく分からない松尾スズキ氏の芥川賞候補作。オーバードースで精神病料に入ることになった女性の14日間の物語。軽いタッチでつづられる女性自身やほかの患者たちの様子は悲惨でありながら、時として笑いを誘う。
ただ、巻末の「解説」によれば山田詠美氏は芥川賞の選評で
と書いているそうだが、ありがちな話ではある。
ドラッグにまつわる小説ジャンルは一定の地位をしめているし、それ自体が「疑似ドラッグ」のような悪魔的な魅力を秘めているのは確か。それを軽妙に語らせながら「実はけっこう重い話でしょ?」と読者に問い掛け、最後にはホロリとさせる。楽しく読めたものの、とことん軽く、奥深さは感じ取ることはできなかった。芥川賞って何なのだろうか。これも時代か…。