スプートニクの恋人

村上春樹著、講談社文庫
スプートニクの恋人 (講談社文庫)
女性同士の恋愛(片思い)を中心に描いた恋愛小説。長く、時として説明調の会話など、村上文学らしい運び。ここら辺は気になる人にとっては気になるところだろう。
ギリシャを主な舞台にしていて、ドロドロとしたものになりがちなテーマを比較的明るくしている。個人的にはかつてギリシャの島を訪れた経験があったのでなつかしかったが、話の流れから言って、ギリシャである必然性があったとは思われなかった。この中性性みたいな部分も村上文学の特徴ではあるのだが。
また、それぞれの人物にもう一つの世界(いわゆるパラレルワールド)が存在していることは描かれているが、そのもう一つの世界自体については多くは語られていない。それが余韻を残している部分でもあるが、若干、物足りない部分でもあった。